3回目を迎えた軽井沢森の音楽祭、開催。

吉村順三さん設計のエロイーズカフェで開催

2018年8月24日〜26日 軽井沢エロイーズカフェ

2018年8月24~26日の3日間、第3回目となる「軽井沢森の音楽祭」が無事終了しました。
24日は7月末に満席、25日もほぼ満席、3日目は最後の2日で予約が急激に増え満席(若干オーバーでお客様にご迷惑をお掛けしました)という形で終えることができました。ご来場下さった皆様本当にありがとうございます。今年で3年目となり、音楽祭の認知度が上がりご支援の輪が広がって来たことに本当に感謝しております。
3日間を通じ、冒頭に日本の青少年へのクラシック音楽普及活動に捧げたエロイーズ・カニングハムさんの生涯とハーモニーハウス(吉村順三さん設計)について紹介させて頂きました。カニングハムさんが60年以上に渡り数百回の若者向けコンサートを開催されたことには本当に頭が下がります。音楽祭を通じてカニングハムさんの偉業とハーモニーハウスを知る人が増え、音楽ホールとしての維持活用に少しでも貢献できたらと思います。
初日の中川座『椿姫』 
中川座の熱演とお客様の反響は既に前回アップしたFBでご報告したとおりです。既に来年のご予約を沢山頂きました。出演者が全員関西ということもあり、はるばる中国地方や関西からも多数のお客様にお越し頂きました。
2日目の『ブエノスアイレスの夏 in 軽井沢』 
オールピアソラプログラムの固定客の皆様からも絶賛のコメントを多数頂戴しました。ピアソラとハーモニーハウスの相性も抜群です。後半第一曲『忘却』の哀愁を帯びたメロディーを聴きながら背景の森の緑がだんだん暮れなずみ夕景へと変わって行きます。『アディオス・ノニーノ』、『ブエノスアイレスの四季』が続くともう堪りません。ホールと3人の息の合った演奏が一体化して、楽曲に込められた感情のうねりが心に染みいりました。快心のライブだったと思います。
3日目の『歌を愛した作曲家たち』
音楽祭始まって以来のピアノ五重奏。チェロとコントラバスの二重奏から始まり、ヴァイオリンとヴィオラ、ピアノソロなどで前半を終え、後半は達人5人が揃ってメインディッシュのシューベルトの鱒。コントラバスが加わったことにより重低音が空気と床から伝わってきて重厚でゴージャスな室内楽を堪能して頂けたと思います。今まで最終日の集客に苦労していましたが満席になり有り難かったです。

来年は8月23(金)、24(土)、25(日)に開催の予定です。運営上ご不便をお掛けしている問題を改善しつつ更にこのホールの物語と特徴を活かした温かく、演奏者、ホール、お客様が三位一体となる音楽祭にしたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくご支援、ご協力をお願い致します。
お世話になった方々
・ご来場下さったお客様
・出演者の皆様
・協賛して頂いたJR西日本様、ピーエス三菱様、佐原敦子Family後援会田中会長、オリエンタル設備工業様、LIXIL様、ビルドプランニング様、フヨウプレカット様、軽井沢コーヒー様
・軽井沢総合研究所の土屋勇磨社長とエロイーズカフェスタッフの板倉さん他スタッフの皆様
・軽井沢新聞社の広川美愛社長、アドエイドの金澤さん
・クラブツーリズムの成瀬課長
・大賀ホールチケットサービスの皆様
・チラシを地元に大量配布してくださった服部正幸様、横田泰紀様、齊藤亮介様
・関西で練習会場をご提供して下さった音野響様
・3日間調律して下さったサンピアン小林様
・写真撮影眞家隆様、動画撮影藤井暢純様とご子息様
・申込受付をしてくださった愛様
・毎年楽屋をご提供下さる大隈様
・当日受付をしてくださった大山様
・ホームページ作成の田中宏様
・他にも沢山の方々にご支援頂きました。
最後に、出演者でもあり、音楽祭の企画立案や準備に尽力して下さった佐原敦子さん(音楽祭実行委員)と中川京子さんに改めて感謝を申し上げます。


尾道で「Innovation of Classical Music」開催。

祈りの空間と音楽

2018年9月29日 広島県尾道市「西國寺」

尾道西國寺でのレクチャー&コンサート「INNOVATION of CLASSICAL MUSIC」、台風接近で足元が悪い中多くのお客様にお越し頂き、昨日無事終了しました。
11時半からのリハーサル、機材をセットしてみると思ったような音にならず、演奏者の位置を楽曲毎に変えながら手探りしてギリギリで納得のポイントを見つけてセッティングを終えました。激しい雨音に備えてPAも準備したものの、あくまでもアコースティックで祈りの空間の響きを引き出すことには拘りました。
麻生副住職と大山寺の住職様と善勝寺の副住職様の3人のお坊様による般若心経と夏秋さんのチェロのコラボでスタート。
前半の器楽編(佐原敦子さんのヴァイオリン、夏秋さんのチェロ)が始まってみると、リハーサル以上の響きにおっと思いました。お客様が入ると音響特性が変わるのでしょう。参加した友人から「弦の音が天から降ってくるような感覚になり感動しました」との感想メッセージを頂きましたが、コンサートホールでは味わえない豊麗な響きに私も進行の仕事を忘れそうになりました。この貴重な空間でコンサートが出来て良かったとしみじみ感じた次第。
後半はソプラノの中川さんとピアノの髙島さんが加わり、オペラ演奏です。下見時点からずっとデッドな空間を心配していた中川さん。800年続く祈りの空間のマジックか、そんなことを超越して厳粛さと妖艶さが一体となった世界が展開されお客様を魅了。、袈裟を想起させる紫の衣装を纏った中川さんは神々しい感じ(仏様の空間で神々しいを使ってよいのか?)すらしました。そしてオペラの世界の煩悩全開ぶりをお客様に伝える役割も見事に果たしたのでした。

さて、麻生副住職のオペラ人生相談です。ムチャブリでダンテの神曲に出てくる地獄の構造と仏教の地獄の構造の比較解説をお願いしましたが、さすがの分かりやすい解説。宗教を超えて、罪の構造体系に共通性があるのは驚きでした。人間に煩悩のあるのは当然で、煩悩を煩悩として受け止め、重要な場面でふと客観視できるかどうかが重要とのお言葉を頂戴しました。トスカが信心深かったのになぜ不幸のどん底に落ちたのか。宗教心が深ければ良いということではなく、宗教自体に執着すること自体が問題を生むこともある等など気づきの沢山ある時間でした。今度こっそり私自身の人生相談に伺いたいと思いました。
重要文化財の西國寺金堂で開催できるようになったのは、長年お世話になっている地元のKさんと麻生副住職のお陰と感謝しています。台風接近で不安的な天気の中お越し下さったお客様と出演者の中川京子さん、佐原敦子さん、髙島春樹さん、夏秋裕一さん、そして広報活動に絶大なご協力を頂いたJR西日本様、企画運営で全面的に支えて下さった尾道自由大学の石井さんと中村学長、スタッフの皆様に熱く御礼申し上げます。麻生副住職からは「音楽コンサートをお寺で活用していく可能性が広がった。何もかも初めてだったけど感動した」との感想を頂きました。皆様とのご縁が繋がり、また開催出来たらと思います。


能登の神社でコンサート、開催。

音旅@能登コンサートのお話し

1,000年の歴史を持つ神秘的で素朴な魅力溢れる神社、思いっきり田舎でアクセス不便な場所でのコンサートでした。

2018年10月20日 石川県 神杉伊豆牟比咩神社

能登の神杉伊豆牟比咩神社でのコンサート、45名定員のつもりで用意していたところ、当日になって地元の方が続々とご来場され、席をギリギリまで詰めて頂き78名の超満員で開演となりました。
神杉宮司のお祓いが済むと、第一部のスタート。佐原さん、カンタさん、今川さんによる「祈りの空間で聴くクラシック」です。元々熟達のメンバーですが、1000年以上続く神社の空気感もあって入神の技が発揮され、場内のテンションが一気に上がりました。
マーケティングのセオリーから見ればクラシックコンサートが開催されることはあり得ない場所。しかもお客様層も様々。生演奏を聴くのが初めての方からクラシック通まで、年齢的にも幼児からご高齢の方までと様々で、一体誰をターゲットに内容を決めれば良いのかかなり迷って当日を迎えたのですが、お客様があっという間にコンサートに没入してくださったのが感じ取れてひと安心。カンタさんの包容力のある骨太のチェロと佐原さんの冴え渡る技巧のブレンド加減が絶妙。今川さんは、隣の幼稚園から運ばれたピアノのコンディションが今ひとつというハンディをものともせず、見事に役割を果たしてくれました。
第二部のオペラ編、中川さんが艶やかなワインレッドの衣装で登場した途端にお客様から「オオッ」というどよめきが起こりました。ゲネプロ段階では拝殿側に降りて一番響くポイントで歌うことになっていたのですが、お客様が入りすぎて出るに出られない状況。ステージ経験豊富な中川さんは全く慌てるそぶりは無く次なるポイントを探しながら歌い始めました。中川さんのソプラノが拝殿に響き渡り、お客様の前傾姿勢が一段と強まります。熱心に聴き入って下さる姿に、神杉宮司も私も思わず「やったね」のアイコンタクト。宮司曰く「神社のお祭りでこんなに盛り上がったことはかつて無いとの禁断のコメント」(笑)。そもそも人間の煩悩全開で道を誤る人続出のオペラを、神聖な本殿で演じてよいものかどうか。「お祓いをやっているから構わないです」というなんともおおらかな宮司なのでした。
オペラ人生相談はトスカを題材に宮司と私の対談です。トスカはどの時点でどうすれば良かったかという質問に、「神父様、牧師様、お坊様と違って、宮司が人生相談にのることはないのです」との答え。仏教、キリスト教と違って神道は「教」ではなく「道」であって、戒律も布教もありません。あくまでも自分の心の中にある「あるべき道」のようなものだそうです。

しかし、それではこのコンサートのオチがありません。ここから先は神杉宮司個人としてのアドバイスとなりましたが、「トスカへのアドバイスをするよりも、むしろ恋人のカヴァラドッシに慢心があった。ゆめゆめ油断するなとアドバイスしたい」とのこと。慢心で道を誤るなというのは、ビジョナリーカンパニー2や4でも出てくる経営学の教えにも通じます。さすが人生経験豊富な神杉宮司、的確なアドバイスで最後を締めてくれました。
夜は神社の大広間で鍋を囲んで関係者と出演者の懇親会。地元の素材で、地元の方々がご準備くださった心あたたまるもてなしに感激です。神杉宮司が長年収集された骨董の中から、狩野探幽の掛け軸など数点も展示されていました。
翌日は中川さん、写真仲間の大山さん、クラブツーリズムの成瀬さんとの4人で金沢でプチ観光。まずはお城の近くにある鈴木大拙館に直行。谷口吉生氏の設計した建築のセンスの良さに痺れますが、特に「水鏡の庭」が気に入ってぼんやり庭を見ながら思索の空間に浸りました。海鮮丼が気になって仕方が無い中川さんは5分で出て近江町市場に直行するかもと言ってましたが、入館した途端琴線に触れるものがあったらしくゆったりと過ごしていました。中川さんから「撮らんかい」という強い視線を感じたのでモデル風に撮らせていただきました(笑)。
最後はお約束の海鮮丼と市場でのお買い物。2980円の百万石丼にウニのオプションを付けて注文。「近江町市場の海鮮丼は観光客向けのもので地元の人は絶対行きません」と金沢の方から酷評される海鮮丼でしたが、申し訳ありません、激ウマでした(笑)。
今回のコンサートが開催できたのは、神杉宮司の強い思いとそれに共鳴して下さる金沢の皆様、特に越野さん、藪谷さん、浜崎さん。神杉さんの妹さんと、太鼓の達人、かがり火の達人、その他金沢と地元の方々のご協力のお陰です。
コンサート時の写真の殆どは大山さんに撮影して頂きました。毎回、お客様なのに色々お手伝い頂き感謝です。遠路はるばるお越し下さったお客様、そして出演してくださった佐原さん、カンタさん、今川さん、中川さん、ご出演ありがとうございました。
 
■出演  神杉充(宮司) 中川京子(ソプラノ) 佐原敦子(ヴァイオリン)  ルドヴィート・カンタ(チェロ) 今川恵美子(ピアノ) 高山信彦(進行・解説)